長野県農業試験場(須坂市)は農機大手のクボタと共同で、農作業の負担を軽減するアシストスーツを開発する。まず、長野県が生産量で国内2位のジュース用トマト向け装置を開発し、来夏の商品化をめざす。将来はリンゴなど他品目でも使えるようにする。農業人口が減るなか、女性や高齢者も無理なく農業を続けられるよう支援して担い手を確保する。
ジュース用トマトは中山間地や傾斜地を含む小規模な土地で栽培することが多く、農家は収穫後の運搬や積み下ろしを手作業でする必要がある。収穫物を入れたコンテナは20キログラム程度と重く、腰を曲げたり腕を上げたりして長時間作業をするため、高齢農家を中心に負担が大きい。
県農業試験場とクボタは作業の省力化のため、体に装着して使う「パワーアシストスーツ」を共同で開発する。リュックサックのように背負い、肩から伸びた2本のワイヤをコンテナの持ち手部分に引っかけて使う仕組み。手元の操作スイッチを押せば、ワイヤを巻き上げてコンテナを持ち上げられる。電動モーターの制御技術を応用して動かすため、実際の重量より軽く感じるという。
足腰を支える補助装置は従来もあったが「重量物を持ち上げたり積み上げたりする機能を持った装置は初めて」(農業機械総合事業部の林正彦担当部長)。バッテリーを内蔵しており、フレーム部分に軽量の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使って全体の重さを約10キログラムに抑えた。腰と太もも部分のベルトで体に固定し、足腰への負担を減らす。
既に試作機を用い、県農業試験場の圃場で実証実験を始めた。装着時の筋肉などの疲労の程度、心拍数の変化や体感による重さの変化を調べる。県農業試験場は「負担が軽くなれば作業時間を短縮でき、1人当たりの収量を増やせる」(企画経営部の大島洋一主任研究員)。人手不足や収穫遅れによるロスも防ぐ。
県内を含む5~6地域を重点対象地区とし、来年早々にもまず計20台を限定販売する。価格は1台106万円の予定。購入者に作業負担が軽くなったかどうかや改善点などを聞き取り調査し、来夏をめどに本格発売。クボタが全国に持つ販売店に販路を広げる。2017年度以降はリンゴや玉ねぎ、白菜などに対応した製品も開発する予定。
開発は農林水産省から15年度「革新的技術開発・緊急展開事業(地域戦略プロジェクト)」の支援を受け、県農業試験場が代表機関を務める「高収量軽労化コンソーシアム」の研究の一環。発光ダイオード(LED)を使った虫害防止機器の開発など他の研究事業との相乗効果を含め、農家所得を2割増やす目標だ。
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