農業機械販売の新潟クボタ(新潟市)がコメの輸出を拡大している。香港やシンガポール向けで量を伸ばし、新潟県から輸出するコメの半分ほどを占める規模に増えた。農機やサービスに対する生産者のニーズを探るためにコメの栽培も始めた。同社は県内の農機販売で5割のシェアを持つ最大手だが、農業は担い手が減り、農機市場は縮小傾向にある。収益を確保するために事業の多角化を急ぐ。
コメの輸出は子会社の新潟農商(同)を通じて2011年に始めた。1年目の実績は36トン。それが17年には2045トンと57倍に膨らんだ。「18年は前年並みを確保し、19~20年に3000トン、将来は年1万トンを目指す」と新潟クボタの吉田至夫社長は意気込む。
主な輸出先は親会社のクボタが精米工場を持つ香港とシンガポールだ。現地で玄米を白米にして外食店などに売り込む。モンゴルも重要な拠点だ。新潟農商が13年に現地企業と合弁会社を設立し、新潟米などを年200トン出荷している。
ここ1、2年は試験目的も含めて販路を欧米やベトナム、タイなどに広げてきた。新潟農商は2月、国際規格である「危険度分析による衛生管理(HACCP)」の認証を取得。6月には農産物の安全性などを認証するグローバルGAPも取得できる見通しという。「国際認証の取得は欧米を開拓する上で武器になる」と吉田社長は期待する。
新潟クボタにとってもう1つの戦略子会社が25%を出資する農業法人、NKファーム新潟(新潟市)だ。新潟市が国の農業特区に指定されたのを受けて、15年に設立した。耕作放棄地を取得してコメや小麦などを栽培しており、西蒲区で水田5.4ヘクタール、西区で小麦畑5・6ヘクタールなどを所有する。
自ら農業を手がけるのは生産者のニーズを探るため。加えて新たな農業技術を試す狙いもある。ドローンを使った農薬散布や、水位を自動で検知して給排水する管理システムなどを実際に試して効果を測り、数値化して営業に役立てる。
クボタ傘下の販売会社の中でも新潟クボタは特異な存在だ。多くの地域販社が関東甲信や中四国などの地域ごとに再編される中、今も単県で独立を保つ。オーナー一族の吉田社長は「親会社とはいい関係だが、一方で飲み込まれないぞという気概もある」と話す。
独立を保つには安定した経営基盤が欠かせない。17年12月期の単体売上高は139億円。内訳は農機販売や補修サービスが107億円で、低温倉庫などその他の事業が32億円を占める。グループ会社では新潟農商の34億円が稼ぎ頭だ。グループ全体で170億円台の売上高を200億円に伸ばすのが当面の目標という。
18年産からコメの生産調整(減反)が廃止され、コメづくりは自由競争の時代に入る。新潟クボタも新たな事業モデルを確立する必要に迫られている。
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