クボタ―誤差センチ精度、無人トラクター、ずれ補正、ルートまっすぐ(2018/01/31)

 農家が抱える人手不足の悩みを解決しようと、クボタが力を入れるのが自動運転の農機だ。2017年6月には業界に先駆けて、無人で作業ができる「アグリロボトラクタ」のモニター販売を始めた。通常のトラクターの運転中に無人機も稼働させて2台で作業をして、時間短縮につなげる。全地球測位システム(GPS)とセンサーを組み合わせた仕組みだ。

 「半自動の農機は増えてきたが、無人でできるのは業界初だ」とクボタ農業機械総合事業部の西啓四郎氏は胸を張る。アグリロボトラクタは人の監視下で稼働させる必要があるが、運転席に人がいなくても耕うんと代かきの作業ができる。使い方は簡単だ。あらかじめ田んぼの内側を一周する。角に到達する度に運転席横に取り付けられたタッチパネルに入力すると形状が記録されて、最短ルートを自動で算出する。

 あとはリモコンのボタンを押すだけで始動と停止ができる。始動するとトラクター後方に備える耕すための機器が下りてきて、自動的に作業を始める。障害物を検知すれば止まる。同社が提案するのが通常の農機との2台使いだ。同じ田んぼのなかを2台で作業すれば原理的にはかかる時間を半減できる。

 自動運転を支えているのがGPSだ。GPSで現在地を把握をしつつ、これだけでは精度が足りない。田んぼのそばに簡易型の基地局を置くことでずれを補正し、プラスマイナス5センチメートルの精度で現在位置を割り出す。

 正しい経路を進むための自動操舵(そうだ)機能は、角度センサーと現在位置データをもとに微修正する仕組みだ。通常の操舵は、ハンドルをきった分にあわせてオイルが流れてシリンダーを動かしてタイヤの向きを変える。自動操舵では電子制御でオイル量や流れる向きを調節してタイヤを動かす。
 一方、シリンダーには角度センサーも搭載している。タイヤの角度と現在位置を確認して微修正しながら決められたルートを進んでいく。実は圃場が大きくなると、人が運転しても決められたルートをまっすぐ進むのは難しいのだという。

 自動運転に欠かせないのが、不用意に近づいてしまった人をひいてしまわないようにする、障害物検知機能だ。アグリロボトラクターは8台の超音波センサーと3台のレーザースキャナーを搭載。障害物を検知すると即座にとまる。

 だが舗装された道路ではない田んぼなどで使うがゆえの難しさもある。一般の道に比べ障害物が少ないが「はじめは雑草にもいちいち反応して、止まってしまった」。同事業部の松崎優之氏はこう回想する。

 地面がやわらかいため車体が傾くこともあり、センサーがあやまって地面を障害物だと認識してしまうこともあったという。そこでレーザーの取り付け位置や、高さ80センチメートル以上の対象物を障害物と認識するようシステムを変えるなどして、精度を高めた。

 農林水産省の統計によると、17年の農業就業人口は181万6千人と7年前に比べて約3割減った。65歳以上の割合も66%と5ポイント上昇している。働き手が不足し高齢化が進むなかでは、機械や情報技術などによる負担軽減が不可欠になる。

 北海道を中心に半自動の農機は普及し始めているといい、無人で稼働するクボタのトラクターには期待も集まる。価格は税別970万円からと、通常のトラクターと比べ1.5倍以上。田植え前に使うトラクターは春が販売シーズンで、売り込みを図る。

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